フラメンコ

さて、久しぶりに日記らしい日記を書こうと思う。



それは本番の二日前の夜、日曜日に始まった。
『歌音ちゃん、わたし伝えたかしら?明日リハーサルで現地で踊るんだけど、水曜日のお稽古で言ったかしら?7時ぐらいに電話ちょうだい。それじゃあね。』
留守電に吹き込まれていた。
先生、そんなこと聞いていません!
相変わらずです。
その場ですぐに電話をかけた。
先生「あら歌音ちゃん。」
歌音「お電話ありがとうございます。それで、明日のことですが…。」
先生「明日の事伝えていたかしら?リハーサルがあるんだけど」
歌音「すいません、明日は友達と遊ぶ約束しちゃってて。」
先生「あら、何時からならこられそう?」
先生、私にどうしても来て欲しいんですね。
そうはイカの×ンタマ
歌音「いえ、もう昼から夜遅くまで。」
先生「そうなの?旅行?それじゃあ会場の場所どうしましょう。わたしあなたに教えてないでしょ?まあ、新宿だし分かる所もあると思うけど。」
歌音「はぁ。」
先生「それじゃ火曜日の本番は、Nさん(フラメンコの先輩)に場所を教えてもらいなさい。西武新宿線新宿駅から歩いてすぐだから。Nに伝えておくわ。」
歌音「あはい、よろしくお願いします。」
先生「それじゃあね、またあさって。」
プツッ、ツー、ツー。
嵐のような人だ。
旅行じゃない、って口をはさめなかった。
隣で一緒にいた友達は大爆笑。
二日連続強行スケジュールで久しぶりに一緒に遊ぶ友達との約束をふいには出来ないです。
この日はそれで終わった。



月曜日、祝日。
再度、留守電に録音されていた。
『歌音ちゃーん、旅行中かしら?あのね、Nは会社帰りに直接会場に行くそうだから、わたしが迎えに行きます。車で、えぇと、スタジオの近くのセブンイレブン。8時にきてください。よろしく。』
先生、旅行じゃないんです!
またすぐに電話をする。
歌音「先生こんばんは。」
先生「あら、こんばんは。それであなた8時にこられるかしら?」
歌音「はい、大丈夫です。」
先生「それで、えぇと、衣装が赤の上下だけです。イヤリングとお花。パリージョ(カスタネット)とアバニコ(扇)。踊りは、あなたはセビリアナスとファンタンゴだけだから大丈夫ね。」
歌音「はい。」
先生「それじゃ明日迎えに行きます。よろしくね。」
プツッ、ツー、ツー
さて、衣装や道具は良い。
曲目の数が分からず。
曲目の順番も分からず。
誰と組むのか、どれを何人で踊るのか分からず。
会場の雰囲気は当然分からず。
化粧の濃度分からず。
ヽ(´▽`)/



当日、雨。3時。
先生から再々度留守電。
要約、雨だから車で近くまで来てくれるそうだ。
8時20分にいつものレッスン場の近くで車に乗り込んだ。
先生から愚痴を聞きながら新宿まで進む。
先生はグループレッスンをスポーツジム、個人レッスンをマンションの一階スタジオと別の場所でやっている。
スタジオの大家が契約違反、法律違犯ギリギリの嫌がらせを先生してくるらしい。
敷金礼金その他もろもろ、どんどん入れ代わってくれた方が大家は儲かると言う。
先生は弁護士はたててるのだが、相手が弁護士たてる金がもったいないと雇わないので、話しが捗らないみたい。
とんでもねぇな。
そうこう話しているうちに到着。
バーのママのバー設立33周年記念。
小さなビルの最上階の狭い部屋の中が舞台らしい。
今回の助っ人は先輩N。
新人で初舞台、個人レッスンのみの看護士H。
当然先生も踊る。
バーのママもソロで踊るのだとか。
ところで先生、踊る順番は?
「あなたはまずパリージョね。それで次にギターさんが入るでしょ。」
ああ、もうギターさん入ってるのか。
先生「それから帽子で、ファンタンゴをあなたと…」
うむ、全然わからん。
後で先輩に聞こう。
先生の話しを聞き流し、即席で作られた狭い控室ともいえない階段の踊り場で素っ裸になる。
バーのママが挨拶に来る。
下から客の声が聞こえる、落ち着かねぇ。
新人Hの化粧をさらに濃くする。
バーのママと新人Hの頭に花をつける。
先輩も先生も自分の化粧に忙しいので、家で化粧直しを含め下地を作って来た歌音が細かい所を全部直してあげる。
最近いつもこんな感じです。
慣れた下っ端は辛い。
バーのママの話し、満員御礼だそうだ。
差し入れのジュースがうまい。
つけまつ毛用のりが目に入って痛ぇっ。
色々ありました。
あれです、本番の直前にこっそりと先輩に聞きました。
1曲目、4曲目、最後の6曲目とアンコール。
おk
店内は下品ではなく、入りにくすぎもせず、適度に良い雰囲気です。
ギターさんノッてます。
1曲目は3番で先輩と一緒に踊り、4番は全員で狭いフロアで踊りました。
フロア滑る、音は出るんだけど。
2曲目はギターさんのソロ、着替えの為の曲です。
3曲目、バーのママ初舞台でソロ、帽子のタンギージョ、見ててハラハラする。
4曲目、先輩と歌音でファンタンゴ、先輩失敗、歌音もつられる。
5曲目、先生のソロ、カラコレス。
6曲目、全員で扇のセビリアナス、パリージョのセビリアナス。
アンコール、ブレリア。
滞りなく終わりました。
さあ帰ろうと思ったら、バーで飲んでいってくださいとのこと。
先生の車で来たので帰るに帰れない。
0時まわるまで客のおっさんと会話しながらお店にいる羽目になりました。
お土産にお弁当とお花もらったから良しとするか。
こうして終幕。



と思いきや。

この話しちょっとだけ続く。



話しはその翌日。
水曜日、フラメンコのレッスン日、天気晴れ。
の3時ぐらい。
先生から再々々度の留守電。
『歌音ちゃん、昨日はお疲れ様でした。大盛況だったわよ。みんな綺麗綺麗って。』
いやぁ、それほどでもー。
『それで、あなたに昨日のことはみんなに黙っててほしいの。うちの娘とK(先輩)、あの人に虐められていたのよ。中学の時に。』
な、なんだってーっ!?
『だから、よろしくね。』
プツッ
衝撃的でした。
世の中狭い。
あのバーのママの助っ人になんで新人Hを採用したのか分かりました。
最近、あちらこちらのイベントは必ず、先輩N、先輩K、先生の娘、及ばずながら歌音。
この4人と先生でまわっていたのです。
今回に限ってなんで新人Hを起用したのか分かりませんでしたが。
やっと分かった。
地元って大変なんだなぁ…。